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三前郷:紀伊続風土記(現代語訳)


三前郷 みさき 全32ヶ村

古座川

三前郷全32ヶ村、西は潮崎荘に接し、北は佐本郷・七川谷郷・小川谷郷の3郷に接し、東は色川荘・大田荘の2荘に界し、南は海に面する。その広さは東西2里ばかり、南北6里ばかりである。

大島は陸から2里余りの海中にある。この地は古の三前郷の内である。三前は御崎で、今の潮埼荘の潮御埼より起こった称である。古の三前郷の境界は今詳らかにしがたい。後世その地を分けて領する者の称に従って荘名が出た。周参見荘潮埼荘の2荘がそれである。今これを除いて他を三前郷とする。佐本郷・七川谷郷・小川谷郷の3郷は深山僻地で後世に開いた地なので、後世称するところに従って別に名前を立てた。

当郷の諸村はみな古座川の両岸に沿って村居をなす。古座浦中湊村高川原村池口村の4村は川の東岸にあって、だいたい家居は軒を並べて相続き市□の形がある。海口の地で舟掛りがあり、かつ山中の材木や諸貨物がみなここに集まり、商売が多いためである。

これより上流は川幅が広くない。川の両岸は田畑の地が少ないので1村の内で家居が1ヶ所に集まらない。川に沿って所々に散在する。農田が少ないので材木や薪柴を出し、炭を焼いて生産の助となす。しかしながら山はみな石山で材木を植える地はいたって少ない。多くは寒村で富有の人家はない。ただ蔵土村・大川村・三尾川村の3村にはすこぶる土豪がある。

川の両岸は山峰が相連なって険しく、みな奇観である。なかでも月野瀬より上流にあるその山巌の奇形はほとんど書画のようである。土地の人はこれを虫喰岩という。大石で所々穴をなしてその形状は虫が食べたようで最も奇しい形がある。その下に虫の糞のようなものがあるが、いまだその虫を見た者はいない。

虫喰岩
  熊野の観光名所:虫喰岩

相続いて相瀬村の一枚岩に至ってその奇観が極まる。

一枚岩
  熊野の観光名所:一枚岩

秋津荘の川中にあるような奇巌が所々に多く、月野瀬村の十七嶽、洞尾村の嶽、蔵土村の平太嶽は雲中に聳え立ち、人目を驚かす。最も壮観である。みな各村の条で詳らかにする。

○古座川
源は大塔峯の東より出て、七川谷郷を経て当郷に来て、古座浦に至って海に入る。川の流れの長さはだいたい14里ばかり。海口に至るまで曲折が多いけれども総じてこれを言えば乾(※北西※)から巽(※東南※)に流れるのを一川の大きな形とする。

古座川

七川谷郷以下左右の諸谷の小川を受ける。その数は数えがたく、三尾川・佐本川・小谷川はその枝谷の最大のものである。川の左右はみな石山であるが、大石が川の中に出るものはなく、かつその流れは緩くて激しい早瀬は少ないので舟便を通すのに便利である。だいたい海口から6里余り、大川村小名真砂まで舟を通すことができる。これより上流は石巌が川中に横たわるので舟の通いはない。

川のなかに所々淵がある。その淵の中に牛鬼淵・漆淵・鮎淵などの名がある。川に鰻の大きなものがある。回り7〜8寸から尺回りのものが多い。最大のものに至っては2尺5〜6寸回り。2尺5〜6寸のものは体長は1丈ばかりであるという。最大のものは油が強くて食べることができず、またこれを炙ると油が多いので肉がみな融け、油となって流れるという。

三前郷32ヶ村

 


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牟婁郡:紀伊続風土記