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芝村 :紀伊続風土記(現代語訳)


芝村  しば 小名 峯(みね)

 田畑高 368石4斗6升4勺
 家数  106軒
 人数  406人

真砂村の艮(※東北※)25町余りにある。乾の方(※北西※)三栖荘から潮見峠を越えて当村に来るのを中辺路街道とする。駅場である。栗栖川の西にあって川に添って村居がある。村名は芝生で、平地の意味から出た(御所ノ芝または兵家の語に一の芝、二の芝などというのと同じ)。小名峯は村の坤(※西南※)、登り25町余りの山上にある。潮見峠の尾根の続きである。

杵荒四所明神社  境内周110間
 祀神 春日四坐  拝殿  摂社 地主明神社
小名下久保という所にある。村中の産土神で、荘中の大社である。古老の伝えでは、古、兵生村に祀る所の春日神像が洪水で流れて来たのを佐本某が栗栖川の股が瀬という所で拾い上げて社を建てて今の地に祀るという。

杵荒の2字を土地の人はショクワウと唱えるのは字音が訛ったのでキナラと訓読すべきだ(きねあらの略である)。大和国の奈良を『万葉集』に「古衣(ふるごろも)きなら」と詠じた歌がある。後代の人が奈良の一名のように註した。ゆえに奈良春日四所というのを杵荒(きなら)四所と書いたのであろう(浮屠四所というのに付会して丹生四所明神というのは誤りである)。

摂社地主明神は上古よりこの地に鎮座なさっていたが、春日の神像を拾ってその境内に祀り崇敬して産土神としてから自ずと摂社となったのであろう。

滝尻五体王子社  境内山周160間
村より12町栗栖川の東、滝尻にある。『御幸記』に見える(全文下条に載せる)。この地は流れの速い瀬で川の水が石に触れて激流する。当社はその側にある。よって滝尻という。社辺に宝篋印塔があって300〜400年前の物と見えるが、石が損じて銘は読みがたい。境内の山上を剣(つるぎ)ノ山という。半腹に岩穴がある。深さ3間、横2間ばかり。

伝えいうことに、古、奥州の秀衡が妻を携えて熊野に参詣した。その妻は臨月であった。この地に至って産気づいた。人家がないのでこの岩穴の内に入って三郎を産む。そのとき立願して安産を得た。よって七堂伽藍を造営して諸経並びに武具などをその堂中に納めたという。よってその堂を秀衡堂と号する。天正の兵乱で破壊し旧記も紛失して今は堂舎の跡はない。

岩穴の少し上に胎内くぐりという岩穴がある。深さ4間ほど。入り口は4尺ばかり、出口は3尺ばかりの穴である。毎年2月彼岸の中日には近隣より諸人が王子に詣でてこの穴を潜るという。神宝に小太刀(長さ9寸)矢根鈴の3品がある。秀衡の奉納した物という。3種とも古色がある(今、社司がいないので村の中の歓喜寺に納める)。熊野古道が廃してから当社は参詣の人も稀で大いに衰微した。

滝尻王子 
  熊野の観光名所:滝尻王子
  熊野の説話:滝尻王子、藤原秀衡の子捨て
  熊野旅行記:藤原定家『熊野道之間愚記』現代語訳3

不寝王子廃跡  境内周8間
滝尻王子の上1町ばかり。剣ノ山の内に礎石がある。土地の人が社の跡であると伝えいう。今は滝尻王子社に合わせ祀っている。

小祠2社
 八幡森  社地山周100間、小名野の田にある。
 弁財天社 社地山周およそ1町、小名峯にある。

歓喜寺  小倉山 禅宗関山派京妙心寺末
小名寺平にある。本堂、僧坊がある。300余年前に正体和尚の開基とのことで正体の木像がある。

堂2宇
 江月庵 禅宗関山派田辺城下海蔵寺末、小名峯にある。地蔵堂である。
 薬師堂 村の中にある。古は真砂八助持仏堂という。僧坊がある。

小倉山
下芝にある。土地の人はこの山のことで大塔宮の故事を伝えるが、大塔宮がこの地にお至りになったことはない。伝えの誤りである。

滝尻宿所
その地は詳らかでない。『御幸記』に「ごつごつして険しい山を登り、瀧尻宿所に入る。川瀬の音が岩石を犯すような瀬音のなかにある宿所である。夜に入って歌題をくださる〔使者が遅れて来るとのこと〕。すぐにこれを詠じ持参する。
例の如く披講の間に参入し、読み上げ終わり(題又参入し、これを読み上げる)退出し、この王子に参り宿所に帰る」とある。

    河辺落葉
 そめし秋おくれぬとたれかいはた川 また浪こゆる山姫の袖

    旅宿冬月
 瀧川のひびきはいそぐ旅の庵を しづかに過ぐる冬の月影

  熊野旅行記:藤原定家『熊野道之間愚記』現代語訳3

堂跡
王子の社前の谷を隔てて堂跡がある。七堂伽藍の跡とも三十三間堂の跡ともいう。考えるに秀衡が建立したという地はここであろう。今、田地となる。

古石塔
中芝という所にある。ひとつは幅3尺ばかり長さ4尺余り。建徳元年庚戌十二月晦考子等敬白と銘がある。この地に昔、辻堂があって古い墓が多いとか。

三度栗
小名内平という所にある。1年の間に3度実を結ぶゆえに三度栗という。実は小さいが味はおいしい。

旧家   真砂氏
真砂荘司の後裔という。

和歌山県田辺市中辺路町栗栖川

読み方:わかやまけん たなべし なかへちちょう くりすがわ

郵便番号:〒646-1421

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牟婁郡:紀伊続風土記