井土村:現・三重県熊野市井戸町
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井土村:紀伊続風土記(現代語訳)
井土村 いづち
口有馬村の乾の方(※北西※)25町にある。井土は古くは葦斗(いと)と呼んだ。字はあるいは井戸と書く。いつの頃からか葦豆智(いづち)と呼ぶ。いずれも地名の意味は詳らかでない。村中で産する蓮根が美味で名産とする。
○八幡宮 境内方25間
本社(表行7尺5寸) 若宮(表行6尺3寸) 拝殿
村中にある。1村の産土神である。
○大馬神社 森山方5町 禁殺生
祀神 大馬権現・熊野権現・大神宮・八幡宮 四社合殿(表行2間1尺) 籠堂
本国神名帳牟婁郡従四位上大佐神
村より西1里14町谷奥にある。大馬権現は本社で、後世を熊野権現・大神宮・八幡宮を合わせ祀って四社権現という(この説は文明11年修造の棟札に書いてあって、これを正説となすべきだ。永禄4年の棟札には熊野伊勢八幡の3社を祀って大馬権現とするというのに似ている。その説は誤謬というべきだ)。
大馬権現は大麻権現で、延喜神名帳に阿波国の大麻比古神社がある。また讃岐国の大麻神社がある。みな同神であろう。ならば当社も古くは大麻と書き、於保阿佐(おおあさ)というのを中略して於保佐(おおさ)と称したことから神名帳には大佐と書いたのであろう。大麻の麻の字を土地の人が誤って音読して於保摩(おおま)と称し、それから遂に文字を改めて大馬の字を用いてきたのであろう。
讃岐国の大麻神社は天日鷲命を祀るという。当社も天日鷲命であろう。後世に説をなすもの、あるいは大魔王を祀る、あるいは神像が大きな馬に乗るというのはみな僧侶の根拠のない話に出たもので、信ずるに足らない。三代実録貞観十七年十月己未大位神。いま本国に大位神という社はない。あるいは位と佐の字体は相似ているので大位は大佐の誤りであろう。天正3年に堀内氏安房守が社領9石を寄付する。慶長6年に浅野家が5石を寄付する。封初はこれを受け継いで用いられる。
境内に瀑布がある。大馬滝という。上下2段となって落ちる。上は懸かり下る。高さ14間、幅2間ばかり。下は傾れ落ちる。高さ30間、幅7間ばかり。水が多いので気象勇猛で、はなはだ壮観である。その他、境内に大杉が列んで神境の霊地であると思われる。
○徳昌寺 神護山 禅宗曹洞派奥有馬村安楽寺末、村中にある。
○龍泉寺 巨嶽山 禅宗曹洞派奥有馬村安楽寺末、村中にある。
○祥岳寺 神護山 禅宗曹洞派奥有馬村安楽寺末、村中にある。
○小祠3宇
○井土川
その源は北山郷の長原村との界から流れ出る。この谷を大馬谷という。西山郷の赤倉村との境から流れ出る谷を瀬戸の谷という。2渓が合流して井土村に注いで海に入る。その海口を井土ノ湊という。湊口に中の岩という岩がある。高さ13間周100間ある。これを阿の岩とし、地方の吽の岩に対にして阿吽の名がある。
瀬戸
村の酉戌の方26町谷奥にある。
○小祠1宇
○瑞巌寺 龍雨山 禅宗曹洞派奥有馬村安楽寺末、村中にある。
三重県熊野市有馬町
読み方:みえけん くまのし いどちょう
郵便番号:〒519-4324