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新鹿村:紀伊続風土記(現代語訳)


新鹿村 あたしか 小名 沼田野(ぬたの) 端馬(はしま) 

新鹿海水浴場

波田須村の丑の方(※北東微北※)、25町にある。艮(※東北※)の方は狼峠を曽根荘の二木島浦との界とする(往還傍に松の峠を界にする)。村居は海に面し、乳無岬(はな)が海上に突き出て、東の方は遊木浦界まで海上径25町ばかり。奥行20町余の大湾である。

里川が村の中央を貫いて流れる。源は乾の方(※北西※)北山郷小俣村との界の山から出てここに来て海に入る。川の南を小名里といい、川の北を小名湊という。里の方が人家が多い。村の中で農閑期には、あるいは材木を仕出し、あるいは地引網をなす。よって生産窮迫に至らない。小名が2つがある。村の南10町ばかり、街道にあるのを沼田野といい、村の東20町遊木浦への道にあるのを端馬という。それぞれ家は10軒ばかり。新鹿の名の意味は詳らかでない。

徳司明神社 方5尺6寸 境内周90間
村の中にある。1村の産土神である。11月朔日を祭日とする。祀神は詳らかでない。寛永の棟札に初めて徳司の名がある。また徳師とも書いてある。社地の支配は村の中の山伏で林光院という。

大仙寺 龍門山 禅宗曹洞派遠州城飼郡新野村想慈院末
小名里にある。寛永記に「永禄8、9年の頃兵乱があって、村民はこの寺の内に籠ったが、西山郷14ヶ村から寄せ来て、双方に討死が多かった」という。

神木杉
小名里にある。長さ20間ばかり。周1丈3、4尺。今は八幡を祭っている。

岩本山古城趾
小名里の巳午にある。本丸は東西45間、南北11間。二の丸は東西25間、南北21間。寛永記に「百余年前に曽根荘が佐々木弾正で押し寄せたが、村民が堅く守ったので寄手は引き退いた」という。また父無山という所にも城跡がある。

温泉
村より13町艮(※東北※)の方の浅谷にある。水は冷たく沸かして浴すべし。今はただ湯の花があるのみ。

窪河(くぼのこうの)滝
里川の支流、祖父嶺という所から流れ出る。一の滝は直瀑で落差5間、二の滝は斜めに流れ、落差25間である。

三重県熊野市新鹿町

読み方:みえけん くまのし あたしかちょう

郵便番号:〒519-4206

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牟婁郡:紀伊続風土記