石部:物産第一
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石部:紀伊続風土記(現代語訳)
石部(2)
- ○蜘蛛血石(クモノチイシ)
那賀郡貴志荘尼寺村の白石谷は,その地南面にして数十の大白石が渓澗を挟んで数百歩の際に連続する。中でも陰陽石(メオトイワ)、冠石(エボシイワ)、獅子口石(グワツタリイワ)などの土地の名があるものは至って大きい。冬の月が石上に脂液薫蒸して厳かに丹青をなすようだ。俗に蜘蛛血石という(昔この山に大蜘蛛がいて往来の人を悩ました。社司貴志正平という者がこれを退治した。蜘蛛の骨が石になったと相伝える。妄説である)。(※中略※)また古説にこの液が赤色なことから雄黄に充ちるのは誤りである。 - ○金牙石(キンゲセキ) (本草○康頼本草にシヤヨ
牟婁郡那智荘浜宮村及び海部郡雑賀荘田浦で産する。中品である。
- ○青礞石(セイモウセキ) (本草)
那賀郡貴志荘の白石谷、名草郡神宮郷の鳴神山などで産する。みな下品である。 - ○越砥(アワセド) (本草○和名抄に末度)
牟婁郡田辺荘の近い山で産する。上品である。
礦砥(アラト) (本草○和名抄にアラド)
在田郡湯浅荘山村及び牟婁郡田辺荘瀬戸村、富田荘才野村、安宅荘日置浦、那智荘橋川村、色川郷樫山村などで産する。
雞肝石(ツシマト) (輟耕録)
牟婁郡の大辺路の所々で産する。
鎌砥石(カマトイシ)
伊都郡官省符荘田原村の山で産する。 - ○水中白石(メクラスイショウ) (本草)
牟婁郡田辺荘鉛山村の湯崎の浜で産する。 - ○石燕 (本草)
石螺(螺類の形のまま石に化するものをいう。下の3品もまたそうである)
石蛤
石蚌
上の4種は在田郡湯浅荘庚申山で産する。
寄居蟲螺石(ゴウナイシ)
牟婁郡田辺荘鉛山村の湯崎ニヱ浜で産する。
- ○蛇含石(ジャガンセキ) (本草)
日高郡川上荘江川村の山中から出る。 - ○礬石(ミョウバンイシ) (本草○和名抄に悶石、康頼本草に湏支太宇佐)
那智荘勝浦村で産する。至って稀である。
黄礬(キミョウバン) (本草○貞享本延喜式にオオニ)
同郡花井荘の楊枝谷で産する。
- ○緑礬(ロウハ) (本草)
普通の品はみな煎煉を仮りてなるものである。牟婁郡栗栖川荘真砂村の山中に多く産する。また花井荘の楊枝谷の銅穴中で産するものは自然生で、至って上品である。中には大塊のものがある。その色は翠緑で透明玲瓏、あたかも瑠璃のように美しい。漢土にも自然生の品があって石礬(タンパン)が混じっていることが『天工開物』に載せている。 - ○湯花(ユノハナ) (一説に本草の水硫黄に克つ相近いものである)
牟婁郡四村荘湯峯村から出る。 - ○試剣石(タチアトイシ) (明一統志)
石灰礦(イシバイイシ)に所々に太刀跡のような切れ込みが多いものである。国中の諸山にある。 - ○試金石(ナチグロ) (物理小識)
牟婁郡の那智浜の名産である。近年は上品である。 - ○花石 (潜確居類書○すなわち木葉石)
在田・牟婁両郡の所々で産する。木の葉の形は種々ある。上品は稀である。 - ○石卵(タマイシ) (天工開物)
牟婁郡大田荘粉白村の玉浦産は名品である(粉白村の条に詳らかである)。また在田郡広荘名島村で下品を産する。 - ○輪石(ワイシ)
在田郡湯浅荘山田村の三社領で産する。 - ○虫喰石
牟婁郡大田荘浦神村にある。鼠色の大石が海に臨んで壁立し、石面に虫の喰った跡がある(このことは虫部に詳らかである)。 - ○観瀾石 (玩石家名である)
牟婁郡三前郷の古座奥で産する。土砂が結して石となったものである。質は淡黄色で黒い筋が巻き上がり厳かに水が湧き上がるようなありさまである。ゆえにその名が付いた。
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