石部:物産第一
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石部:紀伊続風土記(現代語訳)
石部(1)
- ○滑石(カッセキ) (本草)
本草和名に紀伊国に出るとある。いま海部郡浜中荘沓掛村で稀に産するというが、いまだ見当たらない。
冷滑石 (本草○俗名黒蝋石○形は蝋石に似て質は柔かで淡い青色で黒斑がある)
那賀郡田中荘龍門山で産する。 - ○温石(オンジャク) (天文本の和名抄に「温石の温の音は運のようだ」とある。○康頼本草に「滑石、和名は御之也久」とあるのは受け入れ難い」)
『延喜式』の諸国貢薬の中に「紀伊国温石120斤」とある。いま名草郡大野荘の藤白峠の産が上品であり、那賀郡上倉荘上三毛村の産は下品である(一説に温石は病を慰する効能があるが服餌の方法がない。本草和名で「滑石が紀伊国に出るとあるのを見ると温は滑の誤りであろう」という。考えるに漢土で温石というのは1つの石の名ではない。(※中略※)また一説に『延喜式』の温石はこの石を火に焼き、病を慰するのに効能があるので、『拾遺』の温石の名を借りて1つの石の名となしたものであろうという。なお考えるべきである)
- ○石膏(セキコウ) (本草○医心方にシライシ)
牟婁郡の山中で稀に産する。
- ○玉火石(ヒウチイシ) (本草)
牟婁郡赤羽郷の山谷及び那賀郡貴志荘北山村で産する。みな白色である。 - ○長石(ボサツイシ) (本草)
牟婁郡相賀荘船津村の山中の産が上品である。また周参見荘見老津村の山中でも産する。 - ○方解石(カトイシ) (本草○白色透明のものが上品である)
三稜石(サンリョウセキ) (方解石の類で形はことごとく三角で白色透明)
上の2種は牟婁郡の銅山の所々から出る。 - ○松化石(マツイシ) (雲林石譜)
牟婁郡花井荘楊枝村の銅穴中及び名草郡和佐荘矢田峠で産する。みな下品である。 - ○白石脂(ハクセキシ) (本草)
牟婁郡色川郷の大雲取峯及び在田郡石垣荘の次谷で産する。ともに中品である。
黒石脂(コクセキシ) (本草)
日高郡南部荘の千里浜で産する。下品である。
赤石脂(シャクセキシ) (本草)
牟婁郡曾根荘の曽根峠で産する。中品である。 - ○黒赭石(ゴス) (陶説)
海部郡加太荘友ヶ島で稀に産する。陶家でホヤ手と呼ぶもので、下品である。 - ○石鍾乳(ツラライシ) (本草○和名抄にイシノチ)
牟婁郡色川郷の大雲取、潮埼荘(※三前郷の間違い※)古座の黒島、四番荘(※佐本荘の間違い※)大谷村の岩崛、日高郡志賀荘の山中などで産する。また海部郡衣奈荘白崎浦千尋の岩壁上で産するのは数百年を経てなったものである。乳汁が岩上から湧出し、下は海際に流れ連なって厳かで雪山のように白色光艶で海面に映る。他の国でこのような大きなものを見ない。じつに奇観である。 - ○土殷□(ツチダンゴ) (本草)
那賀郡名手荘市場村,日高郡南部荘山田村、牟婁郡田辺荘鉛山村などで産する。 - ○石炭(カラスイシ) (本草)
牟婁郡西山郷平谷村で産する。多くはない。○この石は中国九州辺で多く産する。焼けばよく燃えるのでモエイシともいって土地の人は炭の代わりに用いる。その焼いた滓が漂流して来たのを牟婁郡田辺荘の辺で拾って得て唐墨(カラスミ)と呼び、目の病気の薬であるという。じつに甚だしくおかしなことである。元来漢土で製する墨に松烟、秦皮汁(トネリコノシル)をもてするのを目の病気の薬とするのを墨炭が同じ称であることから、石炭の焼滓であることを知らずに漢土から漂流の墨であるとしてこのように誤ったのだ。 - ○石灰(イシバイ) (本草○本草和名抄にイシバイ)
石灰礦は牟婁郡尾鷲郷の辺、在田郡の所々、名草郡多田郷小野田村などで産する。いま在田郡からこの石を焼き製し出す。すなわち本山(ホンヤマ)石灰で上品である。 - ○蜃灰(カイイシハイ) (本草)
牟婁郡潮埼荘田並浦・二色村、三前郷古座浦、那智荘太地浦・勝浦などで牡蠣殻及び蚌(※ドブガイ※)、蛤殻また海花石(キクメイセキ)、浮石(カルイシ)を焼いて製する。すなわち貝石灰(カイイシハイ)で下品である。 - ○石麺(ウドンメン) (本草○冷水浦でイシノワタという。同名が多い)
名草郡大野荘冷水浦の山の土中から出る。上品である。 - ○浮石(カルイシ) (本草○和名抄にカルイシ)
- ○石芝(クサビライシ) (本草)
石菊(イシキク) (形が菊の花のようなもの)
牡丹石(イシキク) (形が牡丹の花のようなもの)
海花石(キクメイセキ) (広東新語)
鵝管石(トクサイシ) (本草原始)
- ○石蚕(ミトリイシ) (本草)
- ○石蛇(ジャカイ) (本草)
- ○石梅 (桂海金石志○田辺城下で□皮を磨き去って瑯玕というのは誤りである)
- ○石柏(イソヒバ) (本草)
上の10種は牟婁郡の海中の所々で出る。 - ○陽起石(ヨウキセキ) (本草)
- ○石膽(タンバン) (本草○すなわち膽□○形は小さく鮫水晶のように深緑色である)
- ○緑青(ロクショウ) (本草○医心方にアオニ)
上の3種は牟婁郡の銅山の所々で産する。 - ○代赭石(タイシャセキ) (本草)
日高郡安富荘亀山で産する。質は柔らかで砕けやすく下品である。 - ○禹余糧(ハッタイイシ) (本草)
牟婁郡の山中の所々から出る。また日高郡南部荘山田村の産は上品である。またいにしえは海部郡加太荘加太浦の海辺で下品のものを多く産した。今は稀である。 - ○太一余糧(イワツボ) (本草)
牟婁郡芳養荘境村領で産する。多くはない。 - ○卵石黄(ダンゴイシ) (本草)
同所及び奥熊野の所々から出る。
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